転生 したら 悪役 令嬢 に なり まし た。 乙女ゲームに転生!? 悪役令嬢が主役の漫画おすすめ6選!

転生したら悪役令嬢だったので引きニートになります(旧:悪役令嬢は引き籠りたい)

転生 したら 悪役 令嬢 に なり まし た

悪役令嬢と執事の新しい居場所【5】 「そうだな、本当に良かった。 フィロ、お前が戻ってきたのがリウムを迎えた後で、本当に良かったよ」 穏やかだと思った途端に復活したピリリとした空気。 本当に、というう部分に力を入れてレオス様が笑う。 口元は弧を描いているのに、先ほどまでと違いその瞳はまったく笑っていない。 大笑いしたり私をからかっていたのがまるで嘘だったように感じられるほどの、冷たく色のない笑顔。 「なあ、リウム。 そうでなければ、お前の目の前でアルディナを亡ぼして、泣くお前だけを無理やりにでも連れてくるはめになったからな」 静まり返った広場で、レオス様の視線が私をまっすぐに射抜いている。 言葉にならない私を見て、低い笑い声をあげる魔物の王。 「お前のことは気に入っているんだ、リウム。 死への恐れは感じても、魔物という存在を恐れているわけではないお前を。 怯えながらも外交の話になると意外なくらいに目を輝かせ、私とまっすぐに話して見せるお前もな」 「……レオス様?」 「だからこそ、お前をあの国に埋もれさせるつもりはなかった。 我らは気に入った人間に声を掛けることはまれにあるが、その人間が祖国を好きならば無理に移住して来いとは言わん。 だがお前は違うだろう? 正当な評価すらされず、我らの目から見ても異常なほどあの国の人間はお前を忌み嫌っていた。 それでも尽くしていたのはお前の責任感か、それとも意地か……しかしお前は決してアルディナを好きなわけではない。 だからどれだけ拒否されようとも、最終的には強引に連れて来ようと思ってはいたのだが。 その場合は同盟が破棄されるだけで、あえて我らから進んで滅ぼす価値もない国だと考えていた。 そもそも我らとの同盟が解除された時点で、いくつかの国はアルディナから離れて行くだろう。 勝手に自滅していく国に進んで関わる必要など無いはずだったが。 まさか我らが必死になって探していた子供を隠しているとは思わなかった。 だから……」 王が歪んだ笑みのまま私を見つめる。 先ほどまでころころと変えていた表情の下にあった怒りが静かに噴火していくような、そんな印象を受けた。 「そんな真似をした国を放置するなど、ファクルの住人は誰一人許さないだろう。 吹っ切っておいて良かったな、お前が心から我が国の民になるまで待つことはもう出来ない。 どうしようかと思っていたが、ちょうどいい。 さらわれた子供を連れ戻して、おまけにその子供と恋人同士だというのならば尚更お前と我らの縁は強くなる。 お前が本来ならば王家以外が口を出すことが出来ない奴隷市場の環境を整えたおかげで、フィロも生き残ったようなものだしな」 王がすうっと目を細めて、ひやりとした空気が辺りに充満する。 「本当にやってくれたよ、アルディナは。 一切関わりがない? 魔物の子はこの国には絶対にいない? 王家は何の関係もない? 我らが最後まで行方を捜していた子供を記憶をなくすほど劣悪な環境に置いて……少なくとも奴隷商人どもは確実に知っていたはずだ」 空気は冷たいまま、けれど肌がピリピリするほどの怒りのようなものが混ざり、幹部たちもさっきまでの微笑みを消してじっと王のほうを見ている。 冷たい瞳のまま、王が幹部の一人へと視線を向けた。 そして、その視線よりも冷たい声で、静かに言い放つ。 「予定通りだ。 アルディナへ行き、同盟は終わりだと宣言してこい。 それと……当時自分たちは一切関わっていないと言っていたにも関わらず、アルディナの奴隷市場に我が国からさらわれた魔物の子供が売られていたのはどういうことか、三カ月以内に答えをよこせ、と伝えろ。 我らの怒りを示してこい。 今回は脅しのための一発目だが、本気だという意味も込めて奴隷市場は破壊してこい。 奴隷どもは……まあ逃げるというのならばそのまま放っておいても構わんだろう。 そいつらが内乱を起こそうが逃げ出そうとが、我らには関係のないことだ」 「了解いたしました、我が王」 命じられた幹部以外にも三名ほどの魔物が背中の翼を翻して、あっという間に空へと消えていく。 彼らの向かう先は、アルディナの方向だ。 「異論はないな、リウム」 真っすぐにこちらを見つめる王の瞳を見返す。 浮かぶのはアルディナでの日々ではなく、ファクルの魔物たちのこと。 昨日かけられたたくさんの歓迎の言葉。 目の前で心配そうに私を見つめる瓜二つな二人。 そして、今朝魔物の子供たちから貰った花。 あの可愛らしい子たちがアルディナで売られているところを想像してしまえば、答えはすぐに出る。 「ありません。 私はファクルの人間です」 そもそも結局は助ける結果になったとはいえ、フィロを奴隷商人から買っているという事実が私にはある。 それでも彼らは私を仲間だと言ってくれたし、フィロのお兄さんは突然の再会で戸惑いもあるだろうに、私のことも義妹だと言ってくれた。 彼らが私を家族だというのならば、私は家族を守るために動く。 今回はアルディナが相手だけれど、それがたとえファクル以外の世界中の人間にとっての脅威となることだったとしても、私はファクルで生きるという覚悟を、この国の住人になるという覚悟を決めたのだから。 それに…… 「リウムさん、あの」 心配そうな目で私を気づかってくれるフィロに笑みを返した。 彼なんて私よりも考えることが多いだろうに。 この場にいるみんなが私に優しくて、余計にアルディナでの日々が嫌な思い出になっていく。 「フィロ。 あの王子が私に言っていたでしょう。 『俺の国に悪は必要ない』って」 「はい」 「だからね、フィロ。 私、悪役になることにしたの」 「え?」 「ほう」 冷たい瞳にほんの少し愉快そうな色を浮かべた王に向き直って、笑みを返す。 殺気や力の差への恐怖があったとしても、この人という存在自体を怖がる必要はない。 レオス様の言葉を借りるならば、今はもう彼も私の家族のようなものだ。 「私はファクルの人間です。 アルディナにとっての悪がファクルにとっての正義なら、私は……自国であるファクルのために働きます。 その結果がアルディナにとっては悪だとしても、私はそれで良い、それが良いです」 あの国が私に定めた悪役令嬢という立ち位置。 ストーリーの終わりと共に終わる筈だった私の役割は、あの小さなゲーム機の中の出来事と違い、現実として続いていく。 なら私は、私が大切だと思うもののために、アルディナにとっての悪役のままでいると決めた。 フィロと共に生きることが出来る、私にとっては優しい魔物たちがいる国。 ここが、このファクルが私の生きる国。 「そうか」 瞳の中の愉快そうな色が更に濃くなって、レオス様は玉座の背に寄り掛かる様に腰掛けなおした。 「なんにせよ、すぐに結果は来ないだろう。 今の担当者が相当優秀な奴なら話は別だが、我らの納得する答えが出るとは思えんしな」 ふう、と息を吐き出したレオス様の周囲から先ほどまでの怒りの空気が霧散し、幹部たちにも表情が戻ってくる。 先ほどまでの恐怖を感じる空気など初めから無かったかのように、いつも訪問してきていた時と同じ様な雰囲気へと一瞬で戻っていた。 腹の底では煮えたぎるような怒りを抱えているはずなのに、それを感じさせないほど綺麗に切り替えて見せたこの人を、本当にすごいと思う。 いつまでもレオス様が怒りを見せていれば、ファクルの魔物たちも落ち着かないだろう。 ただでさえ、自分たちの感情にまかせて動くことの多い魔物たちだ。 レオス様が一度怒りを鎮めたように見せることで、他の魔物たちが怒りに流されて暴れ始めることはなくなった。 こういう所が、この人が王である理由の一つなのかもしれない。 だからこそ……レオス様が感情のままに動くと決めた時が、ファクル以外の国の最後になるのかもしれないけれど。 そんな風に考えていた私の頭は、レオス様と同じように感情任せで動いていたユート様のことを不意に思い出した。 魔物たちが感情のままに動く事が出来るのは、彼らがこの世界では絶対的な強者だからだ。 好き勝手に動いた所で、彼ら魔物たちがダメージを受けることは少ない。 力があるからこそ動ける魔物たちと、力がない国なのに思ったまま好きに動くユート様。 ファクルとアルディナの同盟は終わったが、彼はどう動くのだろうか。 国の代表者でもある王家の人間の動き方ひとつで、アルディナの未来は決まってしまう。 ユート様がまともに動けるとは思わないが、まず矢面に立つのは現在の奴隷市場の担当者だ。 その人がどの程度出来る人なのかがアルディナの命運を分けることになる。 担当者、が…… 「……あ」 奴隷市場の管理者とは別にいる、総合的な担当者。 こちらも基本は名ばかり、奴隷市場でトラブルなんてめったに起こらないので本当に名前だけだけれど、それでもこういう面で強い人の可能性はある。 しかし、今は誰だったかと思い出そうとして浮かんだ顔に、自分の顔が一気に引きつったのがわかった。 「リウムさん? どうかなさいましたか?」 言葉にならない私を心配そうな目で見つめるフィロに、横目で視線だけ向けて重い口を動かした。 「私たちが追放される少し前にね、王が王子たちの将来のためにそろそろ色々な業務を割り振ろうって、今から慣れさせるために試しに一人一つずつ書類仕事中心に仕事をさせることにした、っていう話があったのよ」 「はい」 「人事に関する書類整理とか、武器や国内の生産についての書類作成とか……奴隷市場の運営に関する業務とか」 「……え? あの、まさか」 「他の王子様方だったらまだ少しは可能性があったかもしれないけど、奴隷市場に関しては確かユート様だったと思う。 おまけに書類作成だけじゃなくて視察とかも含めてすべての業務を覚えることになっていたはずなのよね」 色々と気が付く前だったら口が出しやすくなると喜んだかもしれない。 けれどまた彼のよくわからない主張で奴隷市場が引っ掻き回される可能性の方が高いのは明白だった。 私が整えた環境が元に戻らなければいい、追放前はそんな風に祈ってはいたけれど。 どう考えても、ユート様がレオス様の納得できる答えを出せるとは思えないし、むしろ火に油を注いでしまいそうだ。 きっとゲームそのままの彼だったら、ストーリー終盤の今ならばいい答えが出せるのかもしれないが、現実の彼がしっかり状況判断をできるとは思えない。 アルディナの終わる可能性が一気に広がったことにフィロと同時に気が付いて、何とも言えない目でお互いに見つめ合う。 「その……アルディナ、終わったのでは?」 「自分が守ると言っていたのだから、ちゃんと結果は出すんじゃないかしら。 いい結果になるかどうかは……まあ、そうね、ええ……ファクルが関わっているのだから、王も口を出すと思うけれど」 あの世間から隔離されたかのような考えを持つアルディナが、いい答えを出せるとは決して思えないけれど。 顔が引きつるのはもうしかたがない。 私とフィロの共通の知り合いの中で、一番最悪な人がきてしまった気がする。 「……また、あの人と会うことが決まってしまったわ」 「絶対に話が通じない気がしますね。 疲れそうです」 アルディナの運命よりも、再会が決まってしまったことが面倒で仕方がない。 今までのファクルの動き方から考えて、とりあえず早急にアルディナは謝罪と共に何かしらの物品を差し出し、何故フィロが売られていたのかを調べて真実を見つけ出す必要があるだろう。 そのために近日中に一度訪問してくる可能性が高い。 少なくとも二、三日はレオス様も待つだろうが、それを越えれば徐々にアルディナを追い詰めていくはず。 レオス様が提示した三カ月というのは、ファクルがアルディナを滅ぼす本当に最後のリミット。 同盟が崩れてしまった今、ファクルの魔物たちはアルディナを攻撃しないという約束を守る必要がなくなった。 つまり三カ月の間、一切手出しをしないという意味ではない。 そうだしても、三カ月というのはずいぶん長く感じる。 本来ならば一週間も待たないはず。 「……補正か」 小さくそう呟いて、何となく下を向いた。 これからの三カ月間、ゲーム補正がどこまで働くかで、魔物たちがアルディナにどの程度手を出すのかは決まるだろう。 これは、早急にゲームの後日談を思い出す必要があるかもしれない。 きっと、その三か月後というのがゲームがエンディングを迎える日のはずだから。

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悪役転生(男) 小説家になろう 作者検索

転生 したら 悪役 令嬢 に なり まし た

私の名前は暁月 湊。 気がついたら乙女ゲームの世界に転生していた、ただの女子高生だ。 ————前世でやってた乙女ゲーム『クロイツ・ヒルフェ~君想い謳う~』には、ある問題があった。 ストーリーは王道、攻略対象たちや主人公も王道で、特に問題はない。 だというのに、何が問題だったのかと言うと……それは、悪役。 このゲームの悪役は悪役令嬢ではなく悪役令息だったのだ。 まぁ、それ自体は別にたまにあることだし、特に問題ではない。 問題なのは、何故悪役が攻略対象に並ぶ……いや、むしろ追い越すほどのスペックなのか、ということ。 悪役であるのにも関わらず、攻略対象と並んでも全く違和感がない凛々しい美形であり、それに加えて性格も優しく公平で、身分は高いのに傲るところもなく、能力も高く、他の者から慕われる完璧な人物。 …そんな人物が、悪役。 繰り返す。 …悪役、なのだ。 どうしてこんな美味しいキャラ設定を悪役に持ってきたのかと、ネットでは大炎上だった。 …私も、運営に一言だけ言いたいことがある。 「どーして悪役令息が攻略できないんだ!!!」 ……ま、今思えば攻略できないのも当然だと思う。

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転生したら悪役令嬢になりました。婚約破棄のイベント、早く来い

転生 したら 悪役 令嬢 に なり まし た

婚約破棄のイベント、早く来い】の連載版です。 上記短編は一迅社様より発売の【悪役令嬢ですが、幸せになってみせますわ! アンソロジーコミック 2】の六話目に漫画版が掲載されています。 登場人物の姿をイメージ通りに、そしてとても素敵に描いていただけました。 電子書籍サイト様の無料サンプルなどでも少し読めますので興味のある方は見ていただければ嬉しいです。 本編は次ページから始まります。 お付き合いいただければ幸いです。 [newpage] 【プロローグ】 ある日不意に思い出した前世と呼ばれる記憶。 今の自分の立場が前世で好んで遊んでいたゲームの悪役令嬢と呼ばれるものだと気が付いた時、私の胸に湧きあがった感情は苦しみよりも歓喜のほうが強かった。 よくあるストーリーのゲームだったと思う。 剣と魔法の国のファンタジー、魔物との戦いが日常にある中世のような世界。 主人公であるプルム=グリーディが嫌がらせにも負けずに王子と結ばれ、プルムを陥れようとした悪役である令嬢は婚約破棄の後に一人だけ従者をつれて国を追放されハッピーエンド。 悪役令嬢の名前はリウム=グリーディ。 主人公の姉にあたる彼女は妹を見下し、陰でねちねちといじめ続けていた悪女としてゲームに登場していた。 今の私の名前はリウム=グリーディ。 あまり会話のない妹の名はプルム。 婚約者の王子の名前はゲームのメイン攻略対象だったユート。 窓から見下ろす町並みも、国や関係者の名前も、私たちの容姿も、すべてがゲームそのままの世界。 ゲームと違うのは私が妹に嫌がらせなどというものをしていないこと。 そしてゲーム中のリウムは何の働きもなく地位を笠に着て威張っていたが、今の私は我が国アルディナの外交官として大きな結果を出していること。 けれど、物語はゲーム通りに進んでいく。 筋書き通りにいかない部分を強引に捻じ曲げ、それを真実として。 プルムはこの国で一番に幸せになることが決まっている女の子。 リウムは彼女を引き立てるための悪役。 この国ではそれがすべて。 そうなることが定められているかのように、誰がどう行動しようともゲームの話通りに時間は進んでいく。 まるでゲームの補正でも掛かっている様だ。 町で向けられる侮蔑の籠った視線とひそひそと交わされる私の悪口、それも身に覚えのないことで。 本来ならば嘆き悲しみ、深い失意の底に沈んでしまいそうなそんな現状を、私はただ喜んでいる。 早く、早くと。 断罪の日が訪れるのを、心の中でずっと願っている。 「リウム様、どうかなさいましたか?」 「ううん、なんでもないの。 ありがとうフィロ」 考え込む私を心配してか横に控えていた執事が声を掛けて来る。 彼が少し首を傾けた拍子に、肩口で束ねられた薄い青色の髪がサラリと流れた。 柔らかく細められた海を思わせる深い青の瞳が熱を含んで私を見ている。 ピシッと伸びた背筋も、細い体を包む皺ひとつない執事服も、私に向けられる視線も、少しだけ低い声も。 伝えることは許されなくても、彼のすべてを愛している。 私の言葉に光栄です、と返してくれる彼の瞳は隠し切れない歓喜でトロリと蕩けそうに細められていた。 私の胸に宿った彼への恋心、フィロも同じ気持ちだと気が付いた時、湧き上がった歓喜とそれ以上の絶望。 彼は私が奴隷商人から買ったことで、私の執事になった。 王族との婚約が許されるほどの家に生まれた私と、奴隷だったフィロの恋はとてもでは無いが許されるものではない。 私の身体はこの国、アルディナの人々が納める血税で出来ている。 動くたびにサラサラと流れる腰までまっすぐに伸びる艶のある薄紫色の髪。 乾燥などとは無縁の白く柔らかな肌。 少し切れ長の瞳も髪と同じ薄紫色で、顔の造作も整っている。 身を包む美しいドレス、美しい調度品の数々と大きな家、高い地位。 それらすべてを保つ事が出来るのは、アルディナの民たちのおかげだ。 彼らが作った農作物を食べ、彼らがくみ上げた水を飲み、彼らが作る服に身を包んで。 国民たちが国に税を納めることが義務だというのならば、私の義務は彼らの生活を守ること。 そこに私の身勝手な感情は許されない。 生まれた時からある高い地位は私の結婚相手を定め、やるべき仕事も定めた。 それを受け入れて国民のために働くことが私に課せられた義務だ。 自分の地位にあったこの国の王子との婚約、家が代々勤めてきた外交官という職。 すべて捨てることは許されないもの。 そのことを当たり前のこととして生きて来たし、疑ってもいなかった。 だからその過程で生まれた彼への、私の執事であるフィロへの想いも押し殺さなければならないとわかっている。 そう、叶わないことは当然のことだと思っていた。 彼との間にある見えない壁は、私が私である以上壊れることのないものだとわかっていたから。 記憶のすべてを取り戻し、この国のことを知るあの日までは。 ……だから、今この時は私がずっと待ち望んでいた時間。 「リウム、君との婚約は解消だ!」 広く美しい広間、美しいドレスを着飾った人々は軽蔑のまなざしで私を見ている。 豪華なシャンデリアの下で、大きな窓から差し込む光に照らされた王子が私に断罪を下す瞬間。 王子の後ろには桃色の瞳を涙で揺らしながら震える可愛らしい少女。 震える彼女を慰めるように王子が彼女の頭を撫でた拍子に、肩の上で切り揃えられたウェーブがかった桃色の髪が揺れる。 物語の主役の女の子が王子の力を借りて悪を裁き、幸せになるための一歩を踏み出すシーン。 次々と王子の口から発せられる私の罪を聞きながら、零れ落ちる笑みを隠すように口元を扇で覆う。 やっと、やっとこの日が、この時間が訪れた。 ずっと心待ちにしていた、願っていたこの日が。 私を庇う様に一歩前に立つ彼の背中を見てこみ上げる感情。 私の唯一、絶対の味方……私の愛するたった一人。 彼と出会ってからこの胸に消えることなく燃え上がり続けた火を、ようやく伝えることが出来る。 待っていた、この断罪の日を。 私と彼の間にあるこの見えない壁を、堂々と取り払うことが出来る唯一の方法。 婚約者だった王子から告げられる、婚約破棄と追放の言葉を、ずっと。 笑い出してしまいそうなのを必死に堪えて、扇を更に口元へ近づける。 まるで自分に酔っているかのように私への断罪を口にする王子を見て、今の私も同じように自分に酔っているのかもしれない、なんて思う。 隠した口元の笑みがどんどん深くなる。 王子の後ろで庇われながら、意識したのか無意識なのか私を見て小さく嘲り笑う妹は気が付いてもいないだろう。 今この場にいる誰よりも私が喜びに包まれているということに。 物語はクライマックス。 この国が望む通り、主人公である妹が幸せになる最高のイベントだ。 悪役である私がこの国を去り、障害などすべてなくなったこの国にプルムと王子の中を邪魔するものなど誰もいない。 ……この国、には。 私を追い出すというのならば、私はすべて持って行こう。 今まで生きてきた中で命を懸けて手に入れたものを。 隣国との交渉で手に入れた水場の配分や、輸出入の税金に関する交渉の結果も。 各国の令嬢との交流で手に入れた、同盟国内で私が結んだ縁も。 何よりも大きく価値のある、魔物の国との繋がりも。 幼い頃、一人きりで放り出された外交の場で、自分の身を必死に守りながら私が築いてきた周辺国との関係。 プルムに対するゲーム補正のようなものが効くのがこの国だけなのは、私にとっては救いだった。 他国の中では、私が外交官だからこそ融通を利かせてくれている人もいる。 それを報告しているはずの、外交時に横にいたこともあるはずの両親すらその事実を忘れていたとしても、それは私がこの国の外交官の令嬢としてのプライドと命をかけて得たものだ。 タダで追い出されてやるつもりなんてない。 この婚約破棄が自分が心から願っていることとはいえ、それはそれ、これはこれ。 私が命懸けで手に入れたものを置いていく義理などない。 必要ならば自分達でまた改めて手に入れればいい。 どのみちそれは他国から私個人への評価だ。 個人への評価はその個人についてくるもの。 私がいなくなった後に当然の様に自分たちも貰おうだなんて虫が良すぎる、いや、貰うことは出来ないものだ。 私のことがいらないということは、私についてくる評価もいらないということ。 両親たちが外交官として同盟を結んでいる国との関係は変わらないのだから、そちらだけでどうにかすればいい。 私が他国の方々に一声かければ少しは融通されるかもしれないが、今の周りの環境でそれをしたいとはどうしても思えない。 もしもこの国の国民たちが少しでも私を慕うなら置いていっただろう。 もしも両親が少しでも私を庇うなら置いていっただろう。 もしも妹が、王子が、少しでも申し訳なさそうにしたら置いていっただろう。 私を追い出し二人祝福されて永遠に幸せに暮らしました、なんて、どうしても許せない。 向けられる敵意に対して永遠に優しくし続けるほど聖人にはなれない。 私と彼が遠くで幸せになった時、あなたたちには試練が訪れるだろう。 ストーリーが終わった後だとはいえ、主人公とその運命の相手だというのならば、ゲーム中のように乗り越えられるはず。 幼い頃から評価されずとも積み上げてきた私の功績、私がいなくなることでその基礎と言えるものが無くなった時。 世間を知らず、感情に流されるままその地位を使うという選択肢しか持たないあなたたちに何が出来るというのだろうか。 たとえどんな理由があろうとも、何度説得しても変わらない理想の世界で生きる婚約者。 甘えるだけで何かを指摘する私を怖がり、悪者にする世間知らずな妹。 そんな妹を可愛がり、私を平気で死地へと送り込む両親。 私の功績をすべて妹のものだと思い込み、私への視線を冷たいものに変えた国民。 ゲーム補正というどうしようもないものがあったとしても、私はもう以前のようにこの国を愛しくは思えない。 尽くすことが当たり前の令嬢という立場でも、向けられる視線で気持ちは目減りし、心はすり減っていく。 だから…… 出て行けというのだから出て行こう。 地位に家名、住む場所、取り上げるというのだから渡してしまおう。 私は彼らの望み通り着の身着のまま、この身に残るものだけを持って、唯一の味方であるフィロと一緒にこの国を出ていく。 幸せになりたい、他国ならばそれが叶うと気づいてからもう止められなくなってしまったこの想い。 少しだけ過去の日々を思い出しながら、私を庇う愛しい人の背をじっと見つめる。 断罪の時が訪れたのは私か、それともあなたたちか。 私の目にはずっと渇望して来た幸せな未来へと続く道しか見えないけれど。

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