ベラルーシ 大統領。 ベラルーシ史(ルカシェンコ大統領)

ベラルーシ史(ルカシェンコ大統領)

ベラルーシ 大統領

迷宮ロシアをさまよう 2020. 14 アマチュアアイスホッケーの大会の後、選手と握手するベラルーシのルカシェンコ大統領(右)=ミンスク、2020年3月28日、ロイター にわかに脚光を浴びるベラルーシ ロシアの西隣にあるベラルーシは、人口950万人ほどの小国ということもあって、普段日本で注目を浴びるようなことは、まずありません。 「欧州最後の独裁者」と呼ばれるルカシェンコ大統領の奇矯な言動や、チェルノブイリ原発事故の汚染被害(原発そのものはウクライナに所在)、美人が多いといったことが、時折話題になる程度です。 しかし、新型コロナウイルスのパンデミック以降、この国がネットニュースなどを騒がす機会が増えてきました。 まず、旧ソ連諸国もヨーロッパ諸国もこぞって感染拡大防止の厳戒態勢をとる中で、ベラルーシは非常に緩い対策しか講じていません。 また、ルカシェンコ大統領が、コロナなど恐るるに足らずといった放言を繰り返しています。 そして、政権がコロナ問題を重大視していない表れとして、当国ではサッカーの試合がいまだに普通に観客を入れて開催されているのです。 筆者は、駐ベラルーシ日本大使館に3年間勤務し、そこで得た知見を活かしながらベラルーシについての本まで書いてしまった人間です。 その立場から、本コラムではベラルーシの今について報告するとともに、なぜにベラルーシのコロナ問題への対応がかくも独特なのかを解き明かしてみたいと思います。 コロナに効く? ベラルーシ産のウォッカ・リキュール類(撮影:服部倫卓) ルカシェンコ大統領のコロナ迷言集 コロナウイルスの感染が世界的に広がり、ベラルーシの周辺国がすべて国境を事実上封鎖しても、ルカシェンコ大統領は呑気な発言を繰り返しています。 以下は主な迷言集です。 「手洗いの回数を増やして、食事を朝昼晩と規則正しく摂るようにしよう。 私は酒を飲まない人間だが、最近では冗談で、ウォッカで手を洗うだけでなく、1日に純アルコール換算で40~50グラムのウォッカを飲めばこのウイルスを消毒できるのではないかと言っている。 もちろん、仕事中ではないが」 「諸君、今日はサウナに行きたまえ。 週に2~3度でも、効果がある。 中国は我々に、このウイルスは摂氏60度で、もう生きられないというアドバイスをくれた」 「テレビでトラクターを運転している人々を観て嬉しく思ったのだが、彼らは誰もウイルスの話なんかしない。 トラクターが皆を治してしまうのだ! 畑が皆を治すのだ!」 「(アイスホッケーの試合に出場した後のインタビューで)ここにはウイルスなど一切いない。 ウイルスが飛んでいることに、君が気付かなかったということか? いや、私にもウイルスは見えない。 これは冷蔵庫で、これこそ最良の健康だ。 スポーツ、とりわけアイススケートこそ、正真正銘のウイルス対策薬だ」 「スポーツをしたり、アウトドアに出たりして、肺を助けてあげることだ。 そして、サワークリームを食べること。 脂肪分は、肺がウイルスに打ち勝つのを手助けしてくれる。 専門家や学者がそう言っているのだから、あながち間違いでもなかろう。 私も自分の経験から、その見解を支持する」 どうでしょうか。 いずれも、諸外国なら政権が吹き飛んでもおかしくない奔放な発言ですが、ルカシェンコ大統領の場合はどれだけ風変りなことを述べても、周りのイエスマンたちが神妙な面持ちで聞き入っているか、あるいは熱心にメモをとるだけで終わります。 ちょっと解説しますと、ルカシェンコ大統領は今65歳ですが、大変なスポーツマンで、特にアイスホッケーのマニアです。 また、ルカシェンコはかつて農場長を務めた経歴の持ち主であり、トラクターの運転もお手の物(トラクター自体もベラルーシ工業の主力製品)。 それから、上の迷言集の中で、中国のアドバイス云々と言っているのは、同国とのパイプの太さを誇示しているとも受け取れます。 仮にベラルーシのコロナ感染が軽微であるならば、対策が緩く、大統領が楽観論を吹聴していても、問題ないかもしれません。 しかし、現実にはこの国でもコロナ感染は急激な広がりを見せています。 4月12日現在で、感染確認者数は2,578人、死亡者数は26人に上っています。 総人口が日本の8%程度にすぎないことを考えると、状況は深刻化しつつあると見るべきでしょう。 ベラルーシのサッカーリーグ戦の模様。 これは数年前の写真だが、普段から客入りはこんな感じ(撮影:服部倫卓) 世界で大注目のベラルーシ・サッカー さて、そんなベラルーシで注目を浴びているのが、同国のサッカーリーグです。 ヨーロッパのサッカーは国内大会も国際大会も3月に相次いで休止してしまったわけですが、そうした中でベラルーシでは3月後半に新シーズンが開幕し(ヨーロッパの主流とは異なり春秋制をとっている)、今のところ平常通り大会が続けられているのです。 しかも、普通に観客を入れて! 何しろ、コロナなんてスポーツで吹っ飛ばせという大統領ですので、休止ということにはなかなかなりにくいのですね。 確かに、ベラルーシのサッカーリーグは、観客が数百人ということも珍しくないので、ソーシャルディスタンスをしっかりとって観戦できそうな気もします。 しかし、上の写真に見るように、サッカーの観客はだいたい仲間内で固まるものであり、密閉ではないにせよ、密集・密接になることは避けられません。 やはり、選手・スタッフ・観客の感染リスクは否定できないと思います。 また、実際の試合の様子を見てみると、ウイルスの危険がある中で、幼い少年がボールボーイを務めていたりしていて、日本なら大問題になりそうです。 ベラルーシがサッカーリーグの開催を続けていることについて、諸外国からは、「感染防止の観点からとんでもない」という非難とともに、「うらやましい」というサッカーファンの声も寄せられています。 ベラルーシリーグは欧州サッカー連盟(UEFA)の中で30位以下のマイナーリーグにすぎませんが、コロナで全滅状態にあるヨーロッパサッカーの最後のともし火として、一部マニアの熱い視線を浴びているわけですね。 ベラルーシ・サッカー協会の公式YouTubeチャンネル()では、リーグ戦の試合をすべてライブおよびダイジェストで無料配信しています。 動画のコメント欄を見ると、様々な国の言語が飛び交っており、世界各国のサッカーファンがベラルーシリーグ観戦で渇望を満たしている様子が見て取れます。 現在ベラルーシリーグでプレーしている選手たちには、複雑な思いがあるでしょう。 もちろん、ウイルスに対する恐れや、諸外国が厳戒態勢をとる中で自分たちだけサッカーをやっていていいのかという戸惑いが大きいでしょう。 その反面、急に外国から注目を浴びて嬉しいという気持ちや、「ここで活躍すれば、ロシアや、さらには西欧の一流リーグに移籍できるかもしれない!」という野心も芽生えているかもしれません。 筆者が注目したのは、ルーフ・ブレストというクラブの選手たちがとった行動です。 ここのプレーヤーたちは、今季が開幕してからずっと、選手入場の際に「We Are Playing Praying for the World」とデザインされたTシャツを身に着けています。 「我々は世界のためにプレーする/祈る」というのをスローガンに打ち出したわけですね。 批判にさらされながらも自分たちがサッカーを続ける上での大義名分を模索している感じがします。 なお、ルーフ・ブレストでは他のチームにもこのスローガンを共有するよう呼びかけ、下に見るようなデザインを無料公開したのですが、今のところこれに呼応したチームはないようです。 このように、物議を醸しながらも強行されてきたベラルーシのサッカーリーグですが、そろそろ限界に達しつつあるのかもしれません。 「自分たちは大丈夫なのか」という選手たちの声が、日増しに強まっているようです。 また、サポーターの間でも観戦を回避する動きが広がり、それでなくても少ない観客動員がさらに下降線を辿っていると聞きます。 ベラルーシの国土に「We Are Playing Praying for the World」の文字をかぶせたデザイン なぜルカシェンコは平静を装うのか? サッカーもさることながら、先日はもっと眉をひそめたくなるスポーツイベントがありました。 毎年恒例、アイスホッケー全国アマチュア選手権が多数の来場者を集めた上で開催され、4月11日の決勝ではルカシェンコ自身が加わった「大統領チーム」が見事優勝を果たしたのです(冒頭の写真参照)。 まあ、今回が第13回大会で、そのうち大統領チームが11回優勝しているとお聞きになれば、どんな大会なのかは察していただけるでしょう。 こんな不要不急の極致のようなイベントに、ノーマスクで動員された多数の関係者には、同情を禁じ得ません。 それでは、核心の問題です。 なぜルカシェンコ大統領は、コロナウイルスの脅威に直面しても、平静を装っているのでしょうか。 ずばり言えば、平穏、安定を演出することが、ルカシェンコにとっての生命線なのだと思います。 1994年に政権に就いたルカシェンコ大統領が、その後標榜するようになったのが、「社会志向型市場経済」。 無条件な市場経済化は拒み、国家が主導性を発揮するというものです。 ベラルーシでは、社会主義時代を彷彿とさせる五ヵ年計画すら、いまだに策定されています。 この「ベラルーシ・モデル」により、たとえ世界がリーマンショック級の経済危機に見舞われても、ひとりベラルーシは安定の孤塁を守ることができる。 これがルカシェンコの作り上げてきた神話であり、そうである以上、大統領が新型肺炎ごときで慌てふためくわけにはいかないのです。 そして、重要なポイントは、今年夏に当国で大統領選挙が予定されていることです。 この国の政治体制からして、ルカシェンコ大統領が選挙に負けるということはそもそもありえないのですが、彼は単に再選を果たすだけでなく、きわめて高い投票率と得票率で圧勝する必要があります。 また、ルカシェンコ大統領の活動スタイルは、国のあちこちを飛び回り、生産現場などにも積極的に足を踏み入れるというものです。 こうしたことから、ベラルーシはどうしても平常通りの経済・社会生活を続けなければならないのです。 少なくとも、今年夏の大統領選挙までは。 たとえそれが感染拡大のリスクを高めたとしても。

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live.t4g.org : ベラルーシ、対独戦勝記念の軍事行進 大統領は新型コロナへの懸念を一蹴

ベラルーシ 大統領

ヨーロッパにあるベラルーシという国がとんでもない。 大統領のルカシェンコはソビエト連邦の復活を願っていて、国旗をソ連時代に倣った国旗に変更し、ロシア語化政策によりベラルーシ語の迫害政策を敷いている。 どれだけ、ルカシェンコ大統領がソ連好きかが伝わっただろうか。 しかもベラルーシはヨーロッパで唯一ビザが必要な国なので、日本人で行ったことがある人は殆どいない。 そんな珍しい国、ベラルーシに実際私が行ってきた。 ベラルーシの模様を写真でお伝えすると共に、タイトルにもある「ソ連大好き・独裁国家・死刑制度あり」についても触れていきたい。 それでは、ベラルーシが誕生した歴史と背景を見ていこう。 この閉ざされた国を私の力でこじ開けていきたい。 ソ連時代のベラルーシは白ロシア・ソビエト社会主義共和国 ベラルーシは日本の約半分の国土で900万人が暮らす。 隣国のリトアニアとは歴史的な関わりが深く、過去にはポーランドとリトアニアの支配下に置かれた。 そして、ソビエト連邦の支配が始まる。 その時のベラルーシの名前は白ロシア・ソビエト社会主義共和国。 なぜ白かというと、方角を色で表す習慣から西を指す白、キリスト教化された地域を白いと呼んでいたことなどが由来だ。 ちなみにベラルーシ語でベラは白という意味、ルーシはルーシ人という意味を指す。 ルーシ人は以前このベラルーシ辺りに住んでいた民族の名前だ。 また、ソ連時代にチェルノブイリで起きた原発事故の被害を一番受けたのは、このベラルーシだ。 チェルノブイリはウクライナにあるが、風が南から北に吹いていたので一番被害を受けた。 ソ連崩壊によりベラルーシは独立を果たし独裁国家となる 1991年にソ連より独立を果たしベラルーシとなった。 このときに大統領になったのがアレクサンドル・ルカシェンコだ。 アレクサンドル・ルカシェンコ大統領による独裁国家の始まり バルト三国が親欧米だったのに対して、ベラルーシは親ロシアの政策を打つ。 地理的にバルト三国とベラルーシは近いものの、外交面では対極になったのだ。 ベラルーシの街中には今でもレーニン像が建てられている、ソ連はとっくに崩壊しているにも関わらずだ。 ルカシェンコ大統領は、今のベラルーシが白ロシアソビエト社会主義共和国から相続されたものだと強く思っているのだ。 ベラルーシはアレクサンドル・ルカシェンコ大統領の独裁国家なので、独裁者の意見が全て反映される。 これが独裁国家の怖いところだ。 なんとルカシェンコはヒトラーを真似てナチスの答礼をしたことがあるし、本人の髭はどこかヒトラーを想起させる。 果たしてヨーロッパ最後の独裁国家はいつまで存続できるのだろうか。 ベラルーシはヨーロッパで唯一の死刑制度を導入している ベラルーシは死刑制度を導入している国である。 日本も導入しているので普通に思えるが、ヨーロッパで死刑制度を導入しているのはベラルーシだけだ。 私はベラルーシ人の家に泊まり、一晩中ベラルーシについて興味本位で質問を連投した。 そこで印象に残ったのが死刑制度に反対という話だった。 いくら凶悪な犯罪をしてしまっても、死ぬ必要はないと言っていた。 これは日本にいたら考えもしないことだ。 これがヨーロッパの出した答えであり、死刑制度はベラルーシにしか残っていないのだ。 日本にも死刑制度はあるとベラルーシ人に伝えると、先進国にも関わらず嘘でしょ?と驚かれてしまった。 現代のベラルーシのイメージはITと美女!? 現代のベラルーシはちょっとしたITの発展を遂げている。 ベラルーシの首都ミンスクにハイテクパークを建設して外資を誘致したり、楽天が買収したことで有名となったViber(バイバー)はベラルーシの会社だ。 ベラルーシは国全体としてITを発展させるために、教育にプログラミングの教科を入れたり、IT企業を増やすための法整備も行っている。 ちなみにベラルーシは美女大国としても有名なので、街を歩けば美女だらけで目のやり場に困ってしまうほどだ。 ちなみに女子テニス選手の美女ことマリア・シャラポワもベラルーシ人だ。 隣国のウクライナは世界一の美女の国として言われているので、この地域は美女が揃う何かがあるのだろう。 なぜ、ベラルーシとウクライナは、世界一の美女大国と呼ばれるのか調査して記事を書いてみたので興味があれば読んでみて欲しい。

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ベラルーシ 大統領選、対抗馬拘束 政敵排除の指摘も

ベラルーシ 大統領

迷宮ロシアをさまよう 2020. 14 アマチュアアイスホッケーの大会の後、選手と握手するベラルーシのルカシェンコ大統領(右)=ミンスク、2020年3月28日、ロイター にわかに脚光を浴びるベラルーシ ロシアの西隣にあるベラルーシは、人口950万人ほどの小国ということもあって、普段日本で注目を浴びるようなことは、まずありません。 「欧州最後の独裁者」と呼ばれるルカシェンコ大統領の奇矯な言動や、チェルノブイリ原発事故の汚染被害(原発そのものはウクライナに所在)、美人が多いといったことが、時折話題になる程度です。 しかし、新型コロナウイルスのパンデミック以降、この国がネットニュースなどを騒がす機会が増えてきました。 まず、旧ソ連諸国もヨーロッパ諸国もこぞって感染拡大防止の厳戒態勢をとる中で、ベラルーシは非常に緩い対策しか講じていません。 また、ルカシェンコ大統領が、コロナなど恐るるに足らずといった放言を繰り返しています。 そして、政権がコロナ問題を重大視していない表れとして、当国ではサッカーの試合がいまだに普通に観客を入れて開催されているのです。 筆者は、駐ベラルーシ日本大使館に3年間勤務し、そこで得た知見を活かしながらベラルーシについての本まで書いてしまった人間です。 その立場から、本コラムではベラルーシの今について報告するとともに、なぜにベラルーシのコロナ問題への対応がかくも独特なのかを解き明かしてみたいと思います。 コロナに効く? ベラルーシ産のウォッカ・リキュール類(撮影:服部倫卓) ルカシェンコ大統領のコロナ迷言集 コロナウイルスの感染が世界的に広がり、ベラルーシの周辺国がすべて国境を事実上封鎖しても、ルカシェンコ大統領は呑気な発言を繰り返しています。 以下は主な迷言集です。 「手洗いの回数を増やして、食事を朝昼晩と規則正しく摂るようにしよう。 私は酒を飲まない人間だが、最近では冗談で、ウォッカで手を洗うだけでなく、1日に純アルコール換算で40~50グラムのウォッカを飲めばこのウイルスを消毒できるのではないかと言っている。 もちろん、仕事中ではないが」 「諸君、今日はサウナに行きたまえ。 週に2~3度でも、効果がある。 中国は我々に、このウイルスは摂氏60度で、もう生きられないというアドバイスをくれた」 「テレビでトラクターを運転している人々を観て嬉しく思ったのだが、彼らは誰もウイルスの話なんかしない。 トラクターが皆を治してしまうのだ! 畑が皆を治すのだ!」 「(アイスホッケーの試合に出場した後のインタビューで)ここにはウイルスなど一切いない。 ウイルスが飛んでいることに、君が気付かなかったということか? いや、私にもウイルスは見えない。 これは冷蔵庫で、これこそ最良の健康だ。 スポーツ、とりわけアイススケートこそ、正真正銘のウイルス対策薬だ」 「スポーツをしたり、アウトドアに出たりして、肺を助けてあげることだ。 そして、サワークリームを食べること。 脂肪分は、肺がウイルスに打ち勝つのを手助けしてくれる。 専門家や学者がそう言っているのだから、あながち間違いでもなかろう。 私も自分の経験から、その見解を支持する」 どうでしょうか。 いずれも、諸外国なら政権が吹き飛んでもおかしくない奔放な発言ですが、ルカシェンコ大統領の場合はどれだけ風変りなことを述べても、周りのイエスマンたちが神妙な面持ちで聞き入っているか、あるいは熱心にメモをとるだけで終わります。 ちょっと解説しますと、ルカシェンコ大統領は今65歳ですが、大変なスポーツマンで、特にアイスホッケーのマニアです。 また、ルカシェンコはかつて農場長を務めた経歴の持ち主であり、トラクターの運転もお手の物(トラクター自体もベラルーシ工業の主力製品)。 それから、上の迷言集の中で、中国のアドバイス云々と言っているのは、同国とのパイプの太さを誇示しているとも受け取れます。 仮にベラルーシのコロナ感染が軽微であるならば、対策が緩く、大統領が楽観論を吹聴していても、問題ないかもしれません。 しかし、現実にはこの国でもコロナ感染は急激な広がりを見せています。 4月12日現在で、感染確認者数は2,578人、死亡者数は26人に上っています。 総人口が日本の8%程度にすぎないことを考えると、状況は深刻化しつつあると見るべきでしょう。 ベラルーシのサッカーリーグ戦の模様。 これは数年前の写真だが、普段から客入りはこんな感じ(撮影:服部倫卓) 世界で大注目のベラルーシ・サッカー さて、そんなベラルーシで注目を浴びているのが、同国のサッカーリーグです。 ヨーロッパのサッカーは国内大会も国際大会も3月に相次いで休止してしまったわけですが、そうした中でベラルーシでは3月後半に新シーズンが開幕し(ヨーロッパの主流とは異なり春秋制をとっている)、今のところ平常通り大会が続けられているのです。 しかも、普通に観客を入れて! 何しろ、コロナなんてスポーツで吹っ飛ばせという大統領ですので、休止ということにはなかなかなりにくいのですね。 確かに、ベラルーシのサッカーリーグは、観客が数百人ということも珍しくないので、ソーシャルディスタンスをしっかりとって観戦できそうな気もします。 しかし、上の写真に見るように、サッカーの観客はだいたい仲間内で固まるものであり、密閉ではないにせよ、密集・密接になることは避けられません。 やはり、選手・スタッフ・観客の感染リスクは否定できないと思います。 また、実際の試合の様子を見てみると、ウイルスの危険がある中で、幼い少年がボールボーイを務めていたりしていて、日本なら大問題になりそうです。 ベラルーシがサッカーリーグの開催を続けていることについて、諸外国からは、「感染防止の観点からとんでもない」という非難とともに、「うらやましい」というサッカーファンの声も寄せられています。 ベラルーシリーグは欧州サッカー連盟(UEFA)の中で30位以下のマイナーリーグにすぎませんが、コロナで全滅状態にあるヨーロッパサッカーの最後のともし火として、一部マニアの熱い視線を浴びているわけですね。 ベラルーシ・サッカー協会の公式YouTubeチャンネル()では、リーグ戦の試合をすべてライブおよびダイジェストで無料配信しています。 動画のコメント欄を見ると、様々な国の言語が飛び交っており、世界各国のサッカーファンがベラルーシリーグ観戦で渇望を満たしている様子が見て取れます。 現在ベラルーシリーグでプレーしている選手たちには、複雑な思いがあるでしょう。 もちろん、ウイルスに対する恐れや、諸外国が厳戒態勢をとる中で自分たちだけサッカーをやっていていいのかという戸惑いが大きいでしょう。 その反面、急に外国から注目を浴びて嬉しいという気持ちや、「ここで活躍すれば、ロシアや、さらには西欧の一流リーグに移籍できるかもしれない!」という野心も芽生えているかもしれません。 筆者が注目したのは、ルーフ・ブレストというクラブの選手たちがとった行動です。 ここのプレーヤーたちは、今季が開幕してからずっと、選手入場の際に「We Are Playing Praying for the World」とデザインされたTシャツを身に着けています。 「我々は世界のためにプレーする/祈る」というのをスローガンに打ち出したわけですね。 批判にさらされながらも自分たちがサッカーを続ける上での大義名分を模索している感じがします。 なお、ルーフ・ブレストでは他のチームにもこのスローガンを共有するよう呼びかけ、下に見るようなデザインを無料公開したのですが、今のところこれに呼応したチームはないようです。 このように、物議を醸しながらも強行されてきたベラルーシのサッカーリーグですが、そろそろ限界に達しつつあるのかもしれません。 「自分たちは大丈夫なのか」という選手たちの声が、日増しに強まっているようです。 また、サポーターの間でも観戦を回避する動きが広がり、それでなくても少ない観客動員がさらに下降線を辿っていると聞きます。 ベラルーシの国土に「We Are Playing Praying for the World」の文字をかぶせたデザイン なぜルカシェンコは平静を装うのか? サッカーもさることながら、先日はもっと眉をひそめたくなるスポーツイベントがありました。 毎年恒例、アイスホッケー全国アマチュア選手権が多数の来場者を集めた上で開催され、4月11日の決勝ではルカシェンコ自身が加わった「大統領チーム」が見事優勝を果たしたのです(冒頭の写真参照)。 まあ、今回が第13回大会で、そのうち大統領チームが11回優勝しているとお聞きになれば、どんな大会なのかは察していただけるでしょう。 こんな不要不急の極致のようなイベントに、ノーマスクで動員された多数の関係者には、同情を禁じ得ません。 それでは、核心の問題です。 なぜルカシェンコ大統領は、コロナウイルスの脅威に直面しても、平静を装っているのでしょうか。 ずばり言えば、平穏、安定を演出することが、ルカシェンコにとっての生命線なのだと思います。 1994年に政権に就いたルカシェンコ大統領が、その後標榜するようになったのが、「社会志向型市場経済」。 無条件な市場経済化は拒み、国家が主導性を発揮するというものです。 ベラルーシでは、社会主義時代を彷彿とさせる五ヵ年計画すら、いまだに策定されています。 この「ベラルーシ・モデル」により、たとえ世界がリーマンショック級の経済危機に見舞われても、ひとりベラルーシは安定の孤塁を守ることができる。 これがルカシェンコの作り上げてきた神話であり、そうである以上、大統領が新型肺炎ごときで慌てふためくわけにはいかないのです。 そして、重要なポイントは、今年夏に当国で大統領選挙が予定されていることです。 この国の政治体制からして、ルカシェンコ大統領が選挙に負けるということはそもそもありえないのですが、彼は単に再選を果たすだけでなく、きわめて高い投票率と得票率で圧勝する必要があります。 また、ルカシェンコ大統領の活動スタイルは、国のあちこちを飛び回り、生産現場などにも積極的に足を踏み入れるというものです。 こうしたことから、ベラルーシはどうしても平常通りの経済・社会生活を続けなければならないのです。 少なくとも、今年夏の大統領選挙までは。 たとえそれが感染拡大のリスクを高めたとしても。

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